Camino week4:統合期 vol.2

My Journey

こんにちは,あさみんです。

私は,2022年8月にイギリス留学を終えた後,スペイン・カミーノ巡礼をしました。

カミーノは,約1,000年以上の歴史のあるキリスト教の巡礼の道であり,世界三大巡礼の1つです。

フランスとスペインの国境にあるサン・ジャン・ピエ・ド・ポーからサンティアゴ・デ・コンポステーラを結ぶ,最もポピュラーなフランス人の道(Camino Francés約780kmを歩きました。

その後,サンティアゴ・デ・コンポステーラからフィ二ステーラ,ムクシアまでを結ぶ,フィニステーラ・ムクシアの道(Camino de Fisterra y Muxía約120kmを歩きました。

約900km,29日間かけて歩く中で得た,気づきや学びの経験を,「心の探求」の視点からまとめてみました。

さぁ一緒に,心の山歩(さんぽ)に出かけましょう。

Day26:Santiago – Vilaserio (34.0km)

新たな旅立ち:Camino Fisterra (119.5km)

朝はスロースタート。

まだ体がかなり重い…でも,一歩一歩前に進む。

疲れもあるし,1人で新たな第一歩を踏み出すことが,心の重さにもつながっている。

日常でも,0→1が一番エネルギーが必要だよね。

さて,前に進むぞ。

お昼頃になって,少しずつ笑顔が戻ってきた。

すれ違った年配の男性に挨拶をして,少し会話をした。

別れ際に,「Buen Camino (ブエンカミーノ)!」と声をかける。

「君の笑顔は,歩くドライバーになるね」と返答してくれる。

何だか,純粋に嬉しい。

笑顔でいられるって,私にとってすごく幸せなこと。

でも,私だけでなく周りにも幸せをお裾分けできる可能性がある。

仲間からもらったヒント

韓国人のソンとの会話を思い出していた。

カミーノは,自己管理が可能だということ。

よっぽどでない限り,無理しても大丈夫。

大きなリスクを負うことなく,自己管理能力や自己決定感を高めることができる。

久しぶりに「歩くという行為」に集中して,思考を深めることができた。

サリアあたりから,人の気配や車の騒音…そういったもので,今この瞬間に集中できない私がいた。

ソンが最後に言っていた…韓国で待つ家族には会いたいけど、日常に戻るのが嫌だ。

今はすごく幸せだけど,自分の人生の想像がついてしまうことが,時々つまらないと感じる。

でも,大きな変化を起こすことが難しい。

だから,カミーノは彼の一生において特別な経験である。

私も,会社員時代に同じことを感じた。

周りが敷いてくれたレールに乗せさせてもらうことは,とてもありがたいことだった。

一方で,ある程度の年齢まで組織で働いて,その間にもしかしたら結婚して,子供を産んで,育てて…そんなある意味,想像のついてしまう人生が私にはつまらないと感じた。

そこから約5年かけて,無理のない程度に,でもストレッチが効くチャレンジレベルで,少しずつ人生の舵を切ってきた。

そして,ようやく勇敢にチャレンジし続ける自分に,自信をもてるようになってきた。

少しずつ世界に,私の大切な仲間が増えている。

今までは,未知の世界への好奇心が旅のモチベーションだった。

大切な人に会いたくて飛んでいく…そんな旅ができるってすごくワクワク。

DDがなぜ人気者なのか…単にユーモアがあって明るいだけじゃない。

私は,彼が他者を尊重しているところも大好きだ。

例えば,日本には,チークキスの文化がないことを理解している。

だから最初に,「これは僕の文化では親密性を表すものだけど,もし嫌なら言ってね」と私の文化への配慮があった。

そして,初めて会う人に対して,すごく丁寧に挨拶をする。

相手について知ろうとする姿勢がある。

出身の国や地域,名前などを,しっかりと覚えている。

カミーノでは毎日,本当にたくさんの人に出会うから,名前すら覚えられないことの方が多い。

聞き取れない時,忘れた時は,本人だけでなく,その周りの人にも聞く。

そして,どんな人をも受け入れるオープンな態度。

彼の素敵なところ,私の中にも取り入れたい。

なぜ,人は歩き続けるのか

今日は久しぶりに暑い。

猛暑の中を淡々と歩き続けた頃を思い出す。

なぜ人は「歩くという行為」を文化や歴史を超えて普遍的に続けているのかという,私なりの答えを導いてみた。

「人は幸せになるために生きている。そして,幸せになるために歩く。自分なりの幸せの答えを見つけるために歩く。答えは,自分の中にしかない。だから歩くというシンプルな行為を通して,自分と向き合って,自分と対話をする。」

人によって,幸せの意味や形は違うけれど,誰もがその人にとっての幸せを求めて生きている。

人によって,お金や地位,名誉は,幸せの一部かもしれないけど,全てではない。

カミーノには,より本質的なもの,より根源的なものがある。

だからこそ,何百年もの時を超えてもなお,人はカミーノに魅了され続けている。

私もきっと,このカミーノで導き出される自分なりの答えが,自分にとっての幸せにダイレクトにつながっていると,直観的な響きがあるから,どんな状態であっても歩き続けることができた。

ゴールに辿り着くことが全てではない。

そこに至るまでのプロセスそのものが幸せなのだ。

チェコ人のミハエルが,今夜,フィニステーラまで夜通し歩き続けることを決意した。

彼の挑戦を見守るDDと,フランス人のオリビア。

ミハエルには10年近く付き合っている彼女がいて,この巡礼を終えたらプロポーズする。

彼が,旅の終盤においても,挑戦し続ける姿を見て,私もパワーをもらった。

夜ご飯は,ドイツ人のハナを含む5人で過ごした。

彼女は,現在25歳でポリティカルサイエンスを学ぶ修士課程の学生。

彼女はとても社交的で,自律していた。

コロナの影響でオンラインクラスになったけど,それが嫌で,休学してスウェーデンに滞在した。

そしてカミーノの後は,実家に戻って修論を書く予定だと言っていた。

語学も堪能で,ドイツ語・英語・フランス語・スウェーデン語…5ケ国語を話す彼女は,将来PhD進学したいと言っていた。

DDに,あなたのおかげで素敵な仲間と出会えたことを心から感謝しているって伝えたら,彼からも私のおかげで沢山の人に出会えた,ありがとうと言ってくれた。

私たちの周りには,いつも笑顔が溢れている。

そして,みんなとても穏やかだ。

私たちは,お互いにそんな人たちを必要としていて,そういう人を選んで一緒にいるのかもしれない。

Day27:Vilaserio – Cee (40.6km)

モチベーションの源泉

たとえ時間がかかったり,遠回りしたりしても,人生の多くのことは実現できる。

チャレンジしよう。

今日,私はCeeまで40km歩くと決意した。

DDとオリビアも同じ町を目指している。

そして,きっとミハエルも待っていてくれる。

各自のペースで,同じゴールを目指す…仲間がいると思うと頑張れる。

この,モチベーションって私にとってすごく,すごく大切なものだ。

ドイツ人のハナも「またフィニステーラで会おう!」と言って,彼女のペースで歩いていく。

彼女は,道を間違えそうになっている他の巡礼者に,「こっちだよ!」と声をかけていた。

私も彼女のように,芯の強い女性になりたい。

未熟な私だけど,私なりのペースでチャレンジできている今の自分は好きだし,少し誇りに思える。

70歳のドイツ人のルトゥリック,30代後半のオーストリア人のモニカに出会った。

彼らは,5度目のカミーノだった。

最初,家族かなぁと思って聞いてみたら,カミーノで出会った友人同士なんだって。

こんな出会いもあるんだなぁ…すごい。

もうすでに来年のカミーノのプランも立てていた。

70歳になっても健康である秘訣は,タバコを吸わない,適度な飲酒,週1-2回のウォーキング,そしてカミーノを歩くことって,満面の笑みで話してくれた。

海を見る

山を越えて,アップダウンのある道を歩いた先に,突然,大西洋の大海原が視界に入ってきた。

この1ヶ月の旅で初めて海をみた。

1番の感動かもしれない。

無意識に1人で,大声で叫んでしまった。

世界の果てを目指して歩き続けた,昔の巡礼者たちも同じように感動したに違いない。

Day28:Cee – Fisterra (12.9km) 

フランス人のオリビアは,このカミーノを通して自分の身体の状態をきちんと把握できるようになった。

今日の自分のコンディションはこんな感じ。

だから,これ位のペースで歩けば,疲れずに歩くことができる…こんな具合に。

オリビアとDDは,このカミーノで奇跡の再会を果たした。

彼らは,数年前にカミーノを歩いていた時に出会っていた。

そして,全くコンタクトを取っていなかった。

だけど今回,同じタイミングで同じ道を歩いて,そして再会した。

こんな奇跡がカミーノには,散りばめられている。

フィニステーラまで,ずっと海岸沿いの景色を見ながら歩いた。

ふと,私の故郷…北海道の噴火湾沿いの景色とつながった。

あぁ,世界はつながっている。

そして,見慣れたあの景色が,とても美しいものであったことに気づく。

日本ってやっぱり美しい。

フィニステーラの灯台…ついに,西の果てに辿り着いた。

車やバスを使って観光でここに来ることのは,全く次元が違う。

1ヶ月間,共に歩いてきたザックを背負って,この地まで歩けたことが感慨深い。

ザックを降ろした時に,背中と肩がすごく軽くなった。

いかに自分の身体を酷使していたかを実感する。

太陽が沈む真西の方向にある岩場に腰をかけて,日の入りを待つ。

今はまだ達成感とか,そういうのはない。

波の音,少しずつ沈んでいく太陽を見ながら,私のカミーノに終わりが近づいていることを実感する。

やっぱり達成感よりも,心がすごく満たされている感じ…ほわほわしている…そんな感じだぁ。

夕日ってこんなに穏やかに沈んでいくんだね…とても柔らかい。

私の心と,目の前の夕日がつながっている感覚だった。

静かに,涙が込み上げてきた。

なんだろう…この涙の意味は。

カミーノが終わるのは淋しい。

でも今,日本が恋しい。

故郷に帰りたい…郷愁…ワクワク…期待感…そんなものが入り混じっている。

コメント