こんにちは，あさみんです。
私は，2022年8月にイギリス留学を終えた後，スペイン・カミーノ巡礼をしました。
カミーノは，約1,000年以上の歴史のあるキリスト教の巡礼の道であり，世界三大巡礼の1つです。
フランスとスペインの国境にあるサン・ジャン・ピエ・ド・ポーからサンティアゴ・デ・コンポステーラを結ぶ，最もポピュラーなフランス人の道（Camino Francés）約780kmを歩きました。
その後，サンティアゴ・デ・コンポステーラからフィ二ステーラ，ムクシアまでを結ぶ，フィニステーラ・ムクシアの道（Camino de Fisterra y Muxía）約120kmを歩きました。
約900km，29日間かけて歩く中で得た，気づきや学びの経験を，「心の探求」の視点からまとめてみました。
さぁ一緒に，心の山歩（さんぽ）に出かけましょう。
Day22：Sarria – Gonzar (30.3km)
意味づけ
巡礼証明証をもらえる，サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの最短コースであり，到着地まで約110kmの出発地サリアをスタートとする巡礼者は多い。
一気に巡礼者が増えた。
そしてガリシア地方に入った途端，明らかに気候が変化した。
湿気が多くて，不安定な天気，洗濯物も乾かない。
歩き始めて1時間ほどゆるやかな森の道を歩いた後，やや少し急な登り坂を歩いていく。
ミストで，とても神聖な雰囲気に囲まれる。
それでも，遠くから人工音が聴こえてくるので，1人で歩いても不安はない。
私のカミーノって何だろう…そんなことを朝から考えていた。
疲れていても，休憩を取れない…
私らしすぎるカミーノだ。
そんな自分を，私はどのようにケアしてあげられるのか。
雲海が見える
ガリシアの気候が，この美しく幻想的な光景を創り出す。
サリアに入ってから１人の時間を好むようになった。
仲間と少し距離を置いて，あえて孤独と向き合いたい…そんな気分。
静かに自分の内面に目を向ける。
旅のまとめの時期に入った気がした。
あっという間に時間が過ぎて，淋しさを感じる私がいる。
ここまで歩いてきた中で，ある程度の答えがクリアになったと思う自分がいる。
一方で，「マジで答えなんて見つからない！」っていう声も聴こえてくる。
「自分がやりたいことはクリアで，あとは自分の気持ち次第！」…そんな声。
カミーノを通して，そのことを改めて通感した…という程度かも。
でも歩き続けることで，自分が心から好きと思えることを再確認できたかなぁ。
ポートマリンという町のレストランで，1人でお昼を食べた。
この旅で，初めてこんなにもゆっくりと味わっているかも。
いつも忙しなかったなぁ…今さらだけど。
Day23：Gonzar – Melide (31.8km)
孤独と向き合う
ガリシア地方に入ってからかなぁ…朝は体が重い。
疲れと湿度の高さも影響している。
頭がぼーっとする。
朝食の恒例，トルティーヤにも飽きてきた。
心の内側に閉じこもっているせいか，人との接触を避けている。
カップルに写真撮影を頼まれて，少し嫌な気分というか…快くokできなかった私がいた。
自転車で巡礼をする人たちが，挨拶や鈴を鳴らすことなく，横を通りすぎていくことにイライラしてしまう私がいる。
なぜだろう…。
イライラの気持ちが，遠く離れた日常にも飛んでいって不安や悲しみ，後悔…そんな気持ちとなって目の前に現れる。
「結局，私は1人なんだ」…そんな気持ちに支配されていく。
自分から1人になることを選んで，今この道を歩いているのに，悲しさや孤独を感じている…我ながら面白い。
荷物がズッシリと肩にのしかかる。
多少の身体の疲れはあるけど，足や肩に痛みはない。
それ以上に，メンタルの疲れが出ているんだなぁ。
私の隣に眠る40代後半のドイツ在住の韓国人の女性が，スーパーで新鮮な魚介類を買ってきて，料理を振る舞ってくれた。
彼女は34歳で渡独して，ドイツ文学を学び博士号取得した。
ドイツ人の旦那さんと息子さんと暮らしている。
最初は，ずっとベッドをカーテンで仕切っていて，話しかけるなオーラ満載かと思いきや，とてもフレンドリーで笑顔が素敵な方だった。
急に思い立って，バケーションを利用してカミーノへ来たらしい。
ここで出会う女性たちは，本当に逞しい。
家族や周囲との調和を大切にしながら，しっかりと自分の人生を生きている。
Day24：Melide – O Pedrouzo (33.4km)
強さとしなやかさ
今日は，久しぶりに力強く歩けた。
エネルギーの最適化と心身のバランスを保つこと…すごく大切だなって感じる。
エネルギー過剰だと，気持ちだけが前に進んでしまって，身体と気持ちがアンバランスになる…結果，故障のリスクが高まる。
逆に，エネルギー不足だと，推進力がない。
人生も同じなんだよね。
人生は短い。
でも，人生を長い目で見ることも大切。
短い距離を，全力で走り抜けることも大切。
マラソンのように，ペース配分を調整しながら走ることも大切。
本質を生きる
ふと…バルセロナで観たガウディ作品を思い出した。
彼の凄さって，普遍的な美しさ，曲線美…イサムノグチの作品にも精通するものを感じた。
自分の死後，後世の人々が作品を作り続けることを想定してデザインされたサグラダファミリア。
次世代に継承するものを創る…しかも現在も創り続けられている。
私が，あの時，あの瞬間，観た，サグラダファミリアはもう存在しない。
私はこの短い人生で，一体何ができるのか…
私が創りたい世界とはどんなものなのか…
まだ霧の中だけれど，少しずつ見えてきている気もする。
50代前半のデンマーク人のポールと再会した。
彼とは，レオンまでちょくちょく会っていたけど，抜かしては抜かされ…を繰り返していただけで，実はゆっくり話したのは初めてだった。
彼は，日本のデンマーク大使館のシェフとして働いていたことがあって，東京六本木あたりに住んでいた。
築地や横浜の中華街などに頻繁に買い出しに行っていたこと，休暇中に岡山の師匠の元で働いていた経験など，日本での思い出を聴かせてくれた。
当時はやりがいはあったものの，心身ともにかなりストレスのかかる毎日であった。
今はシェフを辞めて，グリーンランドの米軍基地関連の倉庫で働いている。
4ヶ月間働いて，2ヶ月間バケーションを取るというのが，彼の今の勤務スタイルらしい。
そんな働き方，素敵だなぁ…。
自分が勝手に作り上げている枠や常識を取っ払ってしまえば，無限の可能性が広がっているのかもしれない。
そして彼は，ゆっくりとワインを飲みながら，会話や料理を楽しむスローフードを好むようになった。
彼の話を聴きながら，「私たちがカミーノに惹かれ続ける理由と通じるものがあるね」って伝えてみる。
カミーノの毎日は，歩く・食べる・飲む・話す・寝る…の繰り返しだ。
至極シンプルな生活の中に，本質がある。
彼も，共感してくれた。
彼は，7年前にカミーノに来ようと思っていたけれど，腰痛でドクターストップがかかり断念。
昨年，母親や親戚の死，彼女との別れなど，辛いイベントが重なり，ここに来ることを決意した。
今後の人生について，ゆっくりと考えたかったらしい。
このカミーノでいくつかの答えは出たと言っていた。
そして，サンディアゴまでの最後の10kmは1人で歩くと決めていると言っていた。
「僕は今日40km歩く。君も一緒に歩こうよ」と誘われたけど，さすがにオーバーワークすぎるので，丁寧に断って，彼とは別れた。
Day25： O Pedrouzo – Santiago (19.3km)
奇跡の再会
朝早くから，1人でサンディアゴ・デ・コンポステーラに向かって歩き始めた。
大聖堂まであと少しというところで，私の100mほど前にBARから出てきた人たちの姿が目に入る。
…え，なんか見慣れた姿…え？…えー！…まさかのDDだった。
一気に，私のボルテージが上がる。
この数日間ほぼ1人で過ごしながら，孤独だった。
まさか，このタイミングでブラザーと再会できるなんて！
後ろから，気付かれないように，早足で忍び寄る…
ただでさえ，みんな歩くのが早いから，早足でも追いつかない。
もはや，小走り…いや，最後は全速力でかける！
そして，後ろから全力で飛びついてハグ！
DDも「Wow! Wow! Wow! My sister!」ってめちゃくちゃ叫びながら，驚いている！
重い荷物を担いでいる私をそのまま抱っこして，クルクルしながら，全力でチークキスをして，再会を喜んだ。
このタイミングに，再会できるなんて奇跡でしかない。
大聖堂までの最後の1-2kmは，みんなで昂る気持ちを抑えきれずに，満面の笑みと軽やかな足取りで歩く。
それまでの疲れも一気に吹き飛んでいた。
…そして，見えてきたサンディアゴ・デ・コンポステーラ。
この地を目指して１ヶ月間，西へ西へと一歩ずつ歩いてきた。
…遂に到着。
この瞬間の感動を，仲間と一緒に分かち合えたことに，感謝でしかない。
大きなトラブルなく，この地に辿り着けたことが本当に嬉しい。
私たちよりも先に到着していた，イギリス人のNikkiも合流して，みんなでBARへ行って乾杯した。
DDの友達のオーストラリア人の男性と話した。
彼は，軍隊で医療スタッフの配置調整などしていた。
疲労のせいか，オーストラリア英語のせいか…全然，彼の話が聞き取れてない気がした。
でも，私の心理学の話にも興味をもってくれてゆっくり話した。
大聖堂の中も一緒に見て回った。
夜は，私たちの数時間後に到着した，韓国人のソンと一緒にミサに参加して，ご飯に行った。
彼はフライトの都合上，ここで巡礼を終える。
そして，半日バスツアーに参加してフィニステーラを訪れる予定だ。
私のカミーノの旅は，フィニステーラまでの約100km，そしてムクシアにも行くと決めたのでトータル130km近く残っている。
そのせいなのか，実は達成感はあまり感じていない。
それよりも，「精神的な幸福感」…まさにこれがコップ一杯に満たされて，溢れ出ている感じ。
この大きな1つの区切りを，大切な仲間と一緒に迎えられたことが本当に幸せなんだ。
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