こんにちは,あさみんです。
私は,2022年8月にイギリス留学を終えた後,スペイン・カミーノ巡礼をしました。
カミーノは,約1,000年以上の歴史のあるキリスト教の巡礼の道であり,世界三大巡礼の1つです。
フランスとスペインの国境にあるサン・ジャン・ピエ・ド・ポーからサンティアゴ・デ・コンポステーラを結ぶ,最もポピュラーなフランス人の道(Camino Francés)約780kmを歩きました。
その後,サンティアゴ・デ・コンポステーラからフィ二ステーラ,ムクシアまでを結ぶ,フィニステーラ・ムクシアの道(Camino de Fisterra y Muxía)約120kmを歩きました。
約900km,29日間かけて歩く中で得た,気づきや学びの経験を,「心の探求」の視点からまとめてみました。
さぁ一緒に,心の山歩(さんぽ)に出かけましょう。
Day29: Fisterra – Muxia (27.9 km)
私の理想の人
カミーノを歩き続けて,29日目…巡礼の最終日。
朝,波の音と鳥の囀りを聴きながら歩く。
とてもリラックスしながら歩いている。
私には,こんな静かな場所が合っている。
カミーノの生活って,全てが丸裸なんだよね。
自分という存在をありのままに,自分にも他者にも出していく。
だから,周りの目を必要以上に気にしなくなったし,羞恥心が低下した。
その代わりに,「リスペクト」と「アクセプト」が高まった。
夕日を見に行ったら,ミハエルと灯台で再会した。
DDとオリビアは,お昼にバスでサンティアゴに戻ったんだって。
最後,きちんとお別れできなかったな…でも,きっとまたどこかで会えるから大丈夫。
ミハエルとはゆっくり話してみたいと思っていたけど,正直ここで会うとは思っていなかった。
彼とランチしながら語り合った。
彼は,チェコの小さな村で育った。
以前はパン屋さんで仕事をしていたけど,今はデンマークで彼女と一緒に住みながら,インフラ整備の仕事をしている。
彼の夢は,船のライセンスを取ってクルーズすること。
少し前までは,カミーノの後に彼女にプロポーズをして結婚すると決意していたけど,巡礼を終えた今,正直迷っているって言っていた。
結婚して,子供ができた時に,彼が心からやりたいこと…海の近くで暮らして,海に出ることができるのか?…好きな人と一緒に居たいという気持ちは変わらない…でも自分のやりたいことができるのか…葛藤が生まれていた。
彼は,穏やかでとても優しい。
自然が好きで,海と山を愛し,静かな場所を好む。
もし彼に彼女がいなかったら,私は彼に恋をしていたかもしれない。
ランチの後に,一緒に海に行った。
本当に美しい砂浜だった。
今日は,ずっと天気が良くなかったのに,そこに2人でいた時間は,太陽が顔を見せてくれた。
心も体も温かい。
海に足をつけて,一緒に遊んだ。
砂浜で足を乾かしながら,ビールを飲む。
そして,横になって,ゆっくりと波の音を聴いた。
すごく平和で穏やかな時間だった。
韓国人のソンと,川沿いでビールを飲みながら語り合った時の感覚と似ていた。
DDの言葉を思い出す。
「僕たちには,こういう時間を共有できる仲間が必要なんだ」
ありのままの姿で,穏やかな時間を一緒に過ごせる人。
私にも,こんなパートナーがいたら,心から幸せだろうなって思う。
Day30:Muxia
一期一会
今日は,ムクシアで1日ゆっくり滞在することに決めた。
韓国人のスーと再会した。
すごく,すごく彼女に会いたいと思っていた。
彼女はフィニステーラからムクシアに歩いてきたばかりですごく疲れていた。
再会の挨拶だけ簡単にして,その場ですぐに別れた。
すごく会いたい!話したい!と思っていても,お互いのタイミングが合わないと難しい。
会えている時間,穏やかな時間を過ごせていること自体がすごく貴重なんだと思う。
だからこそ,その一瞬一瞬を大切に生きたい…生きていこう。
それが,私が自分の人生を後悔なく生きることにつながる。
シャワー浴びた後に,ミハエルから連絡が来た。
ポルトガル人の友達に飲みに誘われたから一緒に行かないかって。
結局,彼の友達はアルベルケで別の仲間と飲むことになり,2人でBARへ行った。
ワインを飲みながら,彼は家族との関係について話してくれた。
彼が「家族」だと思える存在は,親友とおばあちゃんだけであること。
両親・兄弟は,自分の「家族」だとは考えていないこと。
私が貴方の立場だったらとても悲しいと伝えたら,「それは僕の問題ではなく,彼らの問題だ」って言った。
そこに至るまでに,彼は本当に多くのことを乗り越えてきたんだと思う。
彼は,いつも笑顔で優しい。
でもその裏には、多くの孤独を抱えてきた。
カミーノをスタートした日,彼も私と同じように,現金をもっていなかった。
そして困っていた時に,出会った男性に,ATMに連れて行ってもらったり,アルベルケの代金を払ってもらったり…無償の愛を受け取った。
1人でいることを好み,人からの助けを否定してきた彼を,カミーノは初日で変容させた。
その経験から,彼はとてもオープンになった。
オープンでいることが,彼の求める深い関係性を築いていく上で,大切だって気付いた。
そして,SNSよりもダイレクトなコミュニケーションを好み,会話を楽しむことを大切にしているところも,彼の魅力だ。
ミハエルが,これからもずっと幸せでありますように。
Day31:Muxia – Santiago (Bus)
自分を写す鏡
サンティアゴ行きのバスの中で,ミハエルとの会話を思い出しながら,自分自身のこれまでを振り返っていた。
おばあちゃん・おじいちゃんと,きちんと向き合ってこなかったことへの後悔…もっと甘えて,一緒に過ごす時間を楽しめばよかったな…とかそんなこと。
思い出していたら,ポロッと涙がでた。
今の私にできること…日本に帰ったら,家族との時間を大切に過ごすこと。
サンティアゴに到着後,お土産の物色に繰り出す。
その帰り道に,どこかのアルベルケで出会った男性をBARで見かけた。
目が合って挨拶をする。
彼も私のことを覚えてくれていた。
ちょうど小腹も空いていたので,ワインとチーズを頼んで彼の隣に座った。
ギリシャ出身でドイツ在住の30代前半の彼は,軍隊を辞めて,家も引き払ってカミーノへ来た。
彼の話は,お金の話が大半だった。
「お金に対して,不安があるの?」と聞くと,両親がpoorだったことが影響して,いつも不安がつきまとっていると答える。
「カミーノを終えて,今どんな気持ち?」と問いかけると,彼は「empty」と答えた。
サンティアゴに辿り着くことを目標に歩き続けてきた。
そして目標を達成して,フィニステーラ,ムクシアと歩き,そしてサンティアゴに戻ってきた。
でもこの先,どうしたら良いのか分からない。
他の人たちは,バケーションでカミーノに来て,日常に戻るだけ。
僕は,全てをストップしてカミーノへ来た…彼らとは意味合いが違うと,彼は語った。
私の心と重なった。
仕事を辞めて1年間が経つ。
無給で学生気分のまま,カミーノに来ている。
この後,ポルトガルにまた旅に出る。
正直,この先の人生についても,まだ霧の中。
このまま,私は遊び呆けて過ごしていて良いのか不安になる。
でも,これは私が選んだ道だし,後悔はない。
だから彼に,「私もあなたと同じ状況だよ。彼らは日常に戻らないといけない。でも私たちは,非日常を続けられるんだよ。それを私たちは望んで,この道を選んだんだよね?」と問いかける。
彼はしばらく黙って考えていた。
何となくポルトガル人のエドガーと初めて会った頃の彼と似ている気がした。
私と話しながら,自分の中の何かと葛藤している。
客観的な幸せに囚われて,自分を見失ってしまっているように見えた。
そして時間を無駄にしたくない…と言いながら,時間に囚われて,今この瞬間を楽しめていないような…まるで,以前の私のようだ。
「何かすごく苦しんでいるような気がするけど,なぜ?」と問う。
彼は「これまで成功してきた。そしてこれからも成功するだろうと思っている。でもそのために,困難を乗り越えないといけない…それはとてもタフなことだから」と語った。
それもすごく理解できた。
日々の出会いは,自分を写す鏡だ。
私が出会う人たちの姿,あり方を通して,本当の自分を見ている…そんな感じがする。
こうして,私のスペインカミーノ巡礼 約900kmの1ヶ月間の旅を終えた。
正直なところ,まだ自分の中で,この旅での学びと気づきを咀嚼できていない部分が多すぎる。
ポルトガルを旅しながら,帰国するまでもう少し,自分なりに形にしていく必要がある。
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