Camino week2:精神的な幸福 vol.2

My Journey

こんにちは,あさみんです。

私は,2022年8月にイギリス留学を終えた後,スペイン・カミーノ巡礼をしました。

カミーノは,約1,000年以上の歴史のあるキリスト教の巡礼の道であり,世界三大巡礼の1つです。

フランスとスペインの国境にあるサン・ジャン・ピエ・ド・ポーからサンティアゴ・デ・コンポステーラを結ぶ,最もポピュラーなフランス人の道(Camino Francés約780kmを歩きました。

その後,サンティアゴ・デ・コンポステーラからフィ二ステーラ,ムクシアまでを結ぶ,フィニステーラ・ムクシアの道(Camino de Fisterra y Muxía約120kmを歩きました。

約900km,29日間かけて歩く中で得た,気づきや学びの経験を,「心の探求」の視点からまとめてみました。

さぁ一緒に,心の山歩(さんぽ)に出かけましょう。

Day11:Burgos – Hontanas (31.0km)

光と影

ケニア生まれイタリア育ちのアスリート女性と出会った。

彼女は,旦那さんが亡くなって途方に暮れた。

彼の死後1年経って,心の平穏を求めてインドのラダックとヒマラヤを訪れた。

そして,その地でその美しさに心が癒されたんだって。

私の親友にもラダックに魅了されていて,彼から何度も話を聞いているし,ヒマラヤにも興味がある。

この女性に出会って,私も必ず行きたい…時が来たら,きっと行く運命だって感じた。

彼女はカミーノに来た理由ははっきりと分からない…仕事をリタイアした自分へのご褒美でもあるし,何かの答えを求めてもいると言っていた。

いつもフレンドリーで笑顔が素敵な彼女は,ふとした瞬間に自分の世界に入り込むことがあった。

私と会話しているけど,私を通して,自分自身なのか,亡くなった旦那さんなのか…誰か,違う人と話しているように感じた。

その瞳は,何だか孤独で,淋しそうだった。

「光と影」…彼女の2つの顔が,人としての深みを出しているように感じた。

精神的な豊かさ

昨日も今日も,足が痛くて,なかなか前に体が進んでくれない。

それでも,前へ前へと一歩ずつ進む私がいる。

私のモチベーションの源泉は?

なぜ,私は歩みを止めずに進むのだろう?

アルベルケに到着後,DDとゆっくりと話をした。

他の人がどう思うかは関係ない

自分の意思で判断して行動すること

そして,その判断に対して責任を持つこと

尊敬し合うことの大切さ

彼は,物資的な豊かさには興味がなくて,心と心のつながり,精神的な豊かさを求めていると語っていた。

彼のパートナーも,きっと素敵な方なんだろなって思った。

ポジティブな伝播

アルベルケに戻った後,オーナーが忙しなくディナーの準備していた。

その隣で,DDが大きな体を俊敏に動かしながら手伝っていた。

その姿に感化されて,スープのサーブを手伝った。

そうしたら,みんなに「ありがとう」と,言葉をかけてくれた。

いつも周りの人たちに助けてもらってばかりだから,誰かの役に立てることがとても嬉しかった。

ポジティブな気持ちや行動はこうやって伝播していくんだろうなぁ。

Day12:Hontanas – Fromista (34.0km)

疎外感

お昼に立ち寄ったBARには,珍しく顔馴染みのメンバーが誰もいなくて,急に1人きりになった気分だった。

タバコの煙も気になって,全然落ち着かなくて,ほとんど休憩しないままに出発した。

夜ご飯も,1人でレストランに入ることを躊躇する私がいた。

お腹は空いているのに,私だけ1人であることを自覚させられるような気がして,嫌だった。

1人で歩くのも,1人でご飯を食べることも,ここでは特別なことではない。

でも,その時は 1人であることに,無性に淋しさを感じた。

そんなことを頭の中でぐるぐるしていたら,それすら考えるのが面倒臭くなった。

腹が減っては,戦は出来ぬ…と,吹っ切れて,近くのレストランに向かうも定休日。

引き返す途中で,薬局に向かうDDと会った。

彼は,「今フランス人の女性達と一緒に飲んでいて,その後,ご飯に行く予定だから,一緒にくる?」と誘ってくれた。

薬局で用を済ませたら戻るから,先に行っていてと言われてフランス人グループの元へ向かった。

DDから声かけてもらったこと伝えて彼女達に挨拶をした。

会話に夢中だったところに入ってしまったらしく,「少しフランス語で話して良いかしら?」と,一言断った後は,ずっとフランス語で話し続けていた。

フランス語が飛び交っている中で,ポツンといるのは,疎外された気分だった。

そして,10分…15分経ってもDDは戻ってこない。

その場にいるのが居た堪れなくなってしまい,「体調が悪いので先に戻ります,DDにもごめんなさいと伝えて」と言って,席を離れた。

みんな多少なりともストレスを抱えたカミーノで,母国語での会話は,ストレスの発散にもなる。

彼女たちに悪気はないと分かっていても,透明人間のように扱われたことが悲しかった。

お腹は空きまくっていたので,その後,結局ミートパイとフルーツを買って公園へ向かった。

韓国人のソンと再会した。

彼とは,カミーノ出発前夜のSt Jeanのアルベルケで会った以来。

同じアジア人である彼に,私の存在を認識して欲しかったのかもしれない。

彼に声をかけて,買ってきた物を食べながら,お互いの話をした。

それぞれの想い

ソンときちんと話したのは,その日が初めてだった。

彼は,韓国の公営会社で働いていて,会社の支援でアメリカで1年間MBAを学び,バケーション中にカミーノに来ていた。

韓国では,カミーノは人気で,いつかこの地へ訪れたいと憧れを抱いている人が多いらしい。

…どうりで,韓国人との遭遇率が高いわけだ。

40歳を過ぎた彼は,これまでの人生を振り返って,今後について考えるためにここに来た。

この約2週間で,彼はすぐに怒ってしまう自分と向き合い,穏やかに,素直に,他者を気にせずに生きていこうと決意した。

そして,カミーノへ来ることを理解してくれた奥さんへの感謝の気持ちも語っていた。

アルベルケに戻った後,ソンの友達のポルトガル出身でロンドン在住のエドガーが合流して,3人でワインを飲みながら話した。

エドガーは, サバティカルで仕事を離れてカミーノに来ていた。

彼は,仕事とお金の話ばかり語っていた。

遠くを見つめながら話す彼は,イライラしているような,何かと葛藤しているようにも見えた。

Day13:Fromista – Calzadilla de la Cueza (35.9km)

私のペース

今日は,約36km歩き続けた。

18.7km時点,Condesという町に到達する直前に,突然の大雨。

Condesで少し休憩して歩き始めると,強い逆風に襲われる。

ここから,次の町まで17.2kmは,休憩ポイントのない中を歩き続けなければならなかった…まさに修行だった。

こんな時に,先を歩くDDの存在や,カミーノ仲間の存在が大きな励みになる。

どこで休憩しようか,適切なタイミングを見極めることが少しずつできるようになってきた。

2時間に1回のペースで休息を取って,しっかりエネルギー補給することで,力強く歩けた。

長い道のりを淡々と歩き続ける。

ふくらはぎの筋肉痛はあるけれど,そこからネガティブな思考は生まれてこない。

「痛い」ということを頭の隅で認識しながら,ニュートラルに淡々と歩き続ける。

自分の体調をよく観察しながら,無理をせずに,自分のペースで歩き続けることができている。

少しずつ,自分のペースが見えてきた。

無心で,急な坂道を登りきったあとの爽快感がハンパない

疲れが吹っ飛んでしまう

そして,どこまでも歩いて行ける気がする

なんだか,自由になった気分

Amazing Graceが頭の中で,エンドレスに流れる

「リスペクト」って言葉が浮かんできた

それぞれの道や人生をリスペクトし合う

ワタシは幸せだ

この道に後悔はない

私のブラザー

今日は,DDに会わなかった

DDと私の間には何か特別なものを感じる

なんだろう…

お互いに自然や山が好き

つながりを求めている

でも,それだけではない…もっと,何かある感じもする。

なんなく,彼とは,きっとカミーノの旅を終えても,つながっていく気がする。

お互い歩くスピードは全然違うし,一緒に歩いているわけではない。

それでも,いつも旅の終わり,旅の始めには顔を合わせてハグをする。

だから,今日のように,いつも会うタイミングで見ないと,あれ?ってなる。

彼は,私のブラザーであり,私は,彼のシスターだ。

そんなことを考えていたら,やっぱりDDと再会した。

今日は疲れが溜まっていたから,個室タイプのちょっと豪華なアルベルケに滞在していた。

その後,彼とイギリス人のKiki,アメリカ人のTim,韓国人のソンとディナーをした。

アルベルケに戻った後も,ポルトガル人のエディガーとスペイン人の男性とワインとビールを飲んで,語らいながら楽しんだ。

Day14: Calzadilla de la Cueza – EI Burgo Ranero (39.9km)

深まる関係性

朝から,韓国人のスーと歩いた。

昨夜,アルコールを大量摂取したせいか,体が全然ついていかなかった。

お昼まで,スーとソンと3人で一緒に歩きながら,色々な話をした。

2人が韓国語で会話している時に,私は韓国語全くわからないのに,なんとなく理解できることがあった。

これって,ラテン語が派生した言語同士がニュアンスで伝わるのに似ている感覚だろなって思った。

レディネス(心の準備)

お昼をみんなと一緒に食べた後,午後は何となく1人で歩きたくなった。

一言伝えて,輪を離れた。

ペースアップしながら,歩きに没頭した。

途中,3歳前後の子供を乗せたベビーカーを押しながら歩くお母さんに出会った。

パンプローナからスタートして,2人でサンディアゴに向かっているんだって。

その姿を見るだけで,エネルギーをもらった。

考え方,工夫次第で,どんな人でも,どんなチャレンジでもできちゃうんだなぁって。

パワフルな姿を見て,私もどこまでも歩いていける気がした。

鳥のように,どこまでも飛んでいけるような感じ。

どんな状況,環境であっても,私次第なんだ…

何となく,「私,帰国しても大丈夫」って思えた。

日本でも,私らしく生きる自信が,確かなものとなった。

カミーノを歩き始めて2週間,Camino Magicを見ている気がする。

どんな人でも,どんな方法でも,その人なりのカミーノの在り方がある

全てを受け入れてくれる,とてつもなく大きな存在

私を含めて,カミーノに来る人たちは,カミーノに受容されて,そして自分自身が自分を受容できるようになる

登山も同じ

山は,人智を超えた存在

登山者は,山や大自然に抱かれて癒される

そして,ありのままの自分を受け入れられるようになる

私たちには,一人ひとりの個性があり,その人なりの生き方がある

何が正解,不正解なんてなくって,どんな道を進むのかを自分で決めていくことが大切

その自己決定のプロセスが,人を大きく成長させてくる。

そして,自分らしい人生を歩むことにつながっている

カミーノは,とてもシンプルな生活の中に,たくさんの選択が散りばめられている。

何が,正しい,正しくないでもない

答えのない問いの一つ一つに,真っ向から向き合って,自分なりの答えを出していく

現実の世界に戻った時に,しっかりと自分の人生を生きるための,予行練習をしているみたい。

変化の原動力となる

10数年前は,ヨーロッパも日本や韓国と同じ環境だった

いずれ日本も変わって,もっと生きやすくなる

でも,君は,環境が変わるのを待つのではなくって,君が,環境を変えていくんだ

変化の原動力になりなさい

DDからもらった言葉。

そして,私のことを忘れないだろうと言ってくれた。

私も,彼のことは絶対に忘れない。

光と影,孤独とつながり

一見相反するもの,両極を知っているからこそ,そのバランスを取ることができる。

私はこの2週間で,私がカミーノに来た目標を1つ達成できた気がした。

さて,残された時間に乗り越えるものはなんだろう…

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