こんにちは,あさみんです。
私は,2022年8月にイギリス留学を終えた後,スペイン・カミーノ巡礼をしました。
カミーノは,約1,000年以上の歴史のあるキリスト教の巡礼の道であり,世界三大巡礼の1つです。
フランスとスペインの国境にあるサン・ジャン・ピエ・ド・ポーからサンティアゴ・デ・コンポステーラを結ぶ,最もポピュラーなフランス人の道(Camino Francés)約780kmを歩きました。
その後,サンティアゴ・デ・コンポステーラからフィ二ステーラ,ムクシアまでを結ぶ,フィニステーラ・ムクシアの道(Camino de Fisterra y Muxía)約120kmを歩きました。
約900km,29日間かけて歩く中で得た,気づきや学びの経験を,「心の探求」の視点からまとめてみました。
さぁ一緒に,心の山歩(さんぽ)に出かけましょう。
Day4:Pamplona – Puente la Reina (24.0km) & Day5:Puente la Reina – Ayegui (23.5km)
大きな輪の一部
韓国人のスーと出逢い,一緒に歩いた。
彼女は仕事を辞めてヨーロッパを旅しながら,カミーノを歩いていた。
身軽にスタスタと歩く彼女は,他者と深い関わりを避けているようにも見えた。
一緒に歩きながら会話を重ねていく中で,私に心を開いてくれたのは,生まれ育った環境やカミーノにきた理由に重なるものが多かったからだと思う。
伝統的な家父長制,年功序列,学歴重視…そんなものが,価値観として少なからず残る,日本と韓国。
社会からのプレッシャーに生きにくさを感じ,人生をリセットするために,国を飛び出してきた。
心の平安とか穏やかな毎日…そんなものを私たちは求めていた。
だから,一緒にいて居心地が良かった。
私はここ数日間,「所属」「居場所」みたいなものを意識して,少し疲れていた。
少しずつグループが固定化されてきて,私はどの輪にも入れない,中途半端な存在のような気がしていた。
言語の壁,文化の差もあったのかもしれないし,単に何かに所属することに窮屈さを感じていたのかもしれない。
ここにも,私の求める居場所はないって,一瞬,頭をよぎった。
でもね,彼女と過ごしている中で,ここを歩くみんなとは「カミーノ」って共通点があることに気付いたんだぁ。
だから,色々な人と繋がれるし,一人で歩いていたって,一人じゃない。
自分のペースで進めば良いのかなぁって思えた。
そう思えたら,すごく心が楽になった。
スーとは,途中で別れた。
またどこかで会いたいと思ったから,あえて連絡先は聞かなかった。
オープンであること
今日は,小さな町のアルベルケに泊まってみた。
とても静かで,心地よかった。
この静けさを求めている人たちが集まっているようだった。
無理して,周りに合わせる必要はない。
その一歩を踏み出せた気がした。
無理して,全ての人と仲良くなる必要はないって思える自分も出てきた。
相性の合う,合わないってある。
話したいことがあれば,話せば良い。
どんな相手にも,構えることなくフラットでいられたら,もっとエコに生きることができる気がした。
シャワーを浴びて,洗濯をして,一息ついたら爆睡…。
自分のイビキで目が覚めて,また寝る…の繰り返し。
少し心が落ち着いて,緊張がほぐれてきたんだろうなぁ。
Day6:Ayegui – Torres del rio (27.4km)
真の自由
私が1番にアルベルケに到着,そのあとに着いたのがベルギー人のDDだった。
彼はクリミナルポリスで,体格も体力もまさに欧米人。
彼は,登山ガイドもしていて,リタイア後は本業にしたいと言っていた。
ディナーの前に,DDがBARに誘ってくれて,ビールをご馳走になった。
2人組みのドイツ人女性…カシャとハスキーボイスの女性も合流した。
彼女たちは次の町まで歩く予定で,休憩にBARに立ち寄ったところだった。
2人とも10kgを超える重いザックを担いで,すごく大変そうなのに,笑顔でとてもパワフルだった。
早起きが苦手なカシャは,いつも9時を過ぎて歩き始める。
そして,多くの人が巡礼を終える昼を過ぎても歩き続けるのだという。
「カミーノで歩く仲間ができたとしても,常に一緒に行動していてはダメよ。自分の足で歩くこと,自分の道を歩くこと,そして自由でいなくっちゃダメよ」
彼女の言葉が,心のド真ん中に突き刺さった。
彼女の両親は,常に一緒になんだって。
どちらかが興味のない,行きたくない場所でも,常に一緒…1人を避けるんだって。
それが良い,良くないというよりも,彼女から真の自由とは何かを教えてもらった気がする。
Day7:Torres del rio – Navarette (32.7km)
自分と他者との対話
この頃には,暗い中1人で歩くことも平気になっていた。
スーと再会し,一緒に歩いた。
彼女は,まだ帰国のタイミングではないって言っていた。
自分が変わってたとしても,社会は何も変わっていない…もう少し時間が必要だって。
それでも,将来は,韓国の田舎でのんびり動物と一緒に,穏やかに暮らしたいと語る彼女は,ちょっと前に会った時よりも,着実に前へ進んでいた。
カミーノを歩きながら,仲間と対話し,自分とも対話する。
そうやって自分と向き合いながら,自分の答えを見出していく。
ふと,「私は?…私は,なんのためにここに来たんだっけ?」
本質的な問いが,また始まった。
内と外の世界
今日は,新たなチャレンジの日でもあった。
無理なく,毎日20〜25km 歩ける。
もう一歩,先に進める気がして,30km歩いてみようと思った。
朝から猛暑,BARでDDと会い,2人でトルティーヤをガッツリ食べて,お昼もオレンジジュースにパンやビスケットをしっかり食べた。
いつものように後半は,休憩を取ることができなくなて疲れてしまったけど,30kmの壁を越えれた。
少しだけ,私も成長できたように感じた。
DDは,1人で歩くことを好む。
すれ違ってちょっと会話をしたら,また自分の世界に戻っていく。
一方で,アルベルケに到着すると,誰よりも人と積極的に関わる。
自分の時間を大切にしつつ,他者との時間も大切にしている。
この絶妙なバランス感が,すごく素敵だと思った。
循環する世界
カミーノを歩き始めて1週間,まだ私のペースを掴めていない。
どうしても周りを意識してしまうし,無理をしてしまう。
長い年月をかけて創ってきた私を,簡単に変えることはできない。
でも,こうやって無意識な自分に気づいて,少しずつ意識的なっていくこと自体が,自分の人生としっかりと向き合っていることなのかもしれない。
カミーノに,何度も来ている人たちがたくさんいる。
彼らはカミーノという非日常で,自分を見つめ直したり,つながりを求めたり,そこから得られる新しい気づきや発見を求めているようにみえた。
過去にカミーノを歩いた経験のある人たちが,初めての人たちに,自分の智慧を与える。
助けてもらった私たちは感謝の気持ちが芽生えて,自分も他者に還元していきたいという意識が生まれる。
智恵を与えた人たちも,相手から何らかのフィードバックをもらうことで,精神的に満たされていく。
カミーノでは,常にそんな循環が生まれている。
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